今週末、3月25日に完成見学会を行う「鎌倉の家」について解説します。
鎌倉は「三方を山に囲まれた要害」として、鎌倉幕府が開かれたことで知られています。
今も残る「切り通し」は、鎌倉の中心地に入るために必要なもので、現在も周囲には必ずトンネルがあります。
今回の建設地はその北側斜面にあるため海を望むことはできませんが、谷にあたる街道の向こうには山並みが広がり、新緑や紅葉が色鮮やかに山を染めます。
敷地は100坪もの広さがありますが、家は小さめに抑えて庭を大きく残しています。
それは施主が造園の仕事をされているためです。
仕事のためのスペースを確保することはもちろん、室内から見える我が家の庭を
自らの手でつくり込むことがご主人達ての希望なのです。
リビングを中心に集まるご家族のライフスタイルと、出入りの職人さんをはじめとして人が集まることの多い事情から、リビング・ダイニングは一体感のある広々とした空間にしました。
また、谷に面する西側は視界が開けるため、LDを南北に並べて西側に配し、大きな開口部から山の木々と自作の庭を眺めます。
さらに、造園の設計などデスクワークのための作業カウンターをリビングの背後に設け、ソファー越しにリビングと同じ景色を望めるようにしました。
2階も西側の眺望を求めて、階段からひと続きの大きなスペースと畳の寝室を西向きに並べ、東側では家と家の間から別の景色が見えるので、そこに浴室を配置しました。
総2階でも十分に成り立つ間取りながら、土間収納や職人用トイレを収めた下屋をつくり、その屋根が葺き下ろす1坪の玄関ポーチは、板張りの外壁と相まって家の表情を引き締めています。
そして応接コーナーから土間収納へと連続する洗い出しの玄関土間は、施主の手による美しい仕上がりで、訪れる人の目を愉しませることでしょう。
この家のタイトルは「山々に囲まれた、景色が主役の家」です。
室内の造りはできるだけシンプルにして、漆喰の壁にヒノキの床と天井が映える清々しい空間です。お施主様が選んだ照明が華を添えていますが、後はできるだけ素っ気なくすることを心掛けました。
「景色が主役」の空間を邪魔するのは野暮ですから。
岸 未希亜