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2012.07.24 / 建築と住まいの話

アーキテクトビルダー大討論会

 先日、「アーキテクトビルダー大討論会」というセミナーが開催されました。講師は、伊礼智氏、秋山東一氏、迫英徳氏の3名、司会進行を新建ハウジングの三浦祐成氏という有名人ぞろい、160名程度の人が集まり会場はいっぱいでした。当社も「アーキテクトビルダー」というキーワードを以前から使用していて、大変興味深いテーマであり、3名が参加してきました。
「標準化」「規格化」「アーキテクトビルダー」などをテーマに、それぞれの講師がセミナーと質疑応答を1時間ずつ行い、その後、3者によるパネルディスカッションを行いました。
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 伊礼さんは、「i-works」をはじめ、標準化の重要性を説く数少ない建築家、
標準化は、建築家としての価値観を崩すものではなく、誰もが確かな仕事ができるようするために必要なもの、料理に例えると「下ごしらえ」であるという。
そして、標準化と改善を繰り返し、完成度を高めることで、ひとそれぞれの作風が現れるという。
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 秋山さんは、規格住宅を代表する建築家、1990年代にフォルクスハウスという規格住宅を3000~4000棟くらい造ったという。そして、その後のBe-h@us(ビーハウス)から現在までの流れや、一貫した構造と設計ルールのシステム化・規格化について解説した。窓は7種類しか使わない、寸法を限定することで、部品化できる、悩まないなど、標準化を大胆に、迷いなく進める秋山さんの姿勢がよくわかる内容でした。
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 迫さんは、鹿児島でシンケンという工務店を経営する建築家兼経営者、
自ら「私の常識は、業界の非常識です」といい、「自分の納得を追求しろ」、「自分の考えをキチンと伝える」「目先の客を追わない」など自身の価値観を信じ、貫き通す設計姿勢や経営理論を説いた。すでに1300棟の住宅を施工し、それらがお客さんを呼ぶ資産であるという。この姿勢を貫きつつ、実績をどんどん積み上げているとうことは、本当にすごいとしかいいようがない。
 迫さんは、合理化を進め、大工の腕に頼らずに、量産できるほうがいいという。しかし、人が使っているものは使わずに、差別化できるものを標準として使用するなど、自身の価値観をしっかりと反映させている。
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 それぞれの人が、品質の安定、コストの削減、設計作業の軽減など、標準化の重要性を説いたが、最終的にお施主さんにいい住まいを提供するためという立場は変わらない。標準化してもいいところは、徹底的に標準化し負担を軽減する、そして、住まいにとって、本質的に大切なことに集中すべきという考え方である。
 伊礼さんは、優先順位が重要で、設計の組み立てに魂を込めるといい、重心の低い空間や開口部廻りの仕掛けが「居心地のいい佇まい」を生み出すという。
秋山さんは、敷地のテクストを読むこと、窓の配置で住宅の8割の価値が決まる、躯体があって窓をしっかりと収めれば、それでいい家になるという。
迫さんは、自身の生業は、心地よい居場所の考察と実践、家族の情愛を育む、機能的で心地いい家をつくることが目的という。

 最後のパネルディスカッションで、秋山さんの「まねしちゃだめだよ」という言葉は、表面だけまねても意味はない、標準化の目的を理解しなさいという、メッセージのようでした。そして、設計の腕を上げるためには、自身の「設計道場」にくるのが一番だという流れに強引にもっていってしまいました。

 「アーキテクトビルダー」とは、決まった一つの形があるわけではありませんが、「標準化・規格化」と「個別の住まいに対する高い設計力」により、心地よい住まいを確実に提供できるビルダーと言えそうです。

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セミナーの後は、懇親会もあり、とても有意義な時間となりました。(最後を締める伊礼さん)

高橋

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