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2012.10.18 / 建築と住まいの話

茅ヶ崎の二世帯 その壱

昨年の暮れに完成した茅ヶ崎の二世帯住宅を紹介します。

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二世帯住宅では大人4人との打合せになるとはいえ、どちらかの世帯がリードするケースが多いのですが、こちらのお施主様4名には各々の意見がしっかりあって質疑や要望が多岐にわたったので、チーフ2人体制で臨みました。

敷地は「湘南に住む」というフレーズがぴったりの海に近い場所です。北側にセットバックを要する巾の狭い道路があり、南側は尖ったような変形敷地ですが、かえって隣家が迫っておらず、日照や通風には恵まれた環境でした。
お施主様は、長くこの地にお住まいのご夫婦とお母様。そして同市内のマンションに住む息子家族(夫婦+娘)という四世代6名でした。幾つかの住宅会社を回って研究していたそうですが、当社のコンセプトハウスを訪れた時に、臭いや空気感、デザイン、スタッフの対応などに好印象を持たれたとのことで、私たちとの家づくりが始まりました。

それでは、この家の特長を紹介します。

一つ目の特長は、完全分離型の二世帯住宅である点です。

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1階を親世帯、2階を子世帯にするという区分けは標準的なものですが、内部での行き来を完全になくし、2階玄関には外階段でアプローチするという共同住宅のような形態を取りました。
各世帯の希望やイメージ等かなりの部分が違っていたうえに、家どうしが繋がっていないということで、1階と2階はまるで別の家のように間取りや室内の雰囲気を変えています。

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親世帯は母親との同居という生活経験を踏まえて、プライバシーを確保するために廊下で部屋をつなぎました。廊下をつくることでLDKの面積が少し小さくなってしまいましたが、最終的に奥様ご納得の間取りが完成しました。
リビング・ダイニングからは庭の中央に残した老松がよく見え、お母様の部屋は日当りのよい南東角にあり、専用トイレも備えています。ご夫婦の寝室からは隣家の梅が見え、またトイレも近いので歳を重ねても安心です。

二つ目の特長は、家相に基づく間取りです。

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子世帯のご主人は勉強熱心な方で、構造のこと、白蟻のこと、断熱材のこと、シックハウスのことなど様々な事象にアンテナを張っていましたが、間取りについては家相を満たすことが条件でした。「家相」を採り入れると間取りに制約が加わり、自由な設計が難しくなるのは事実です。しかし「家相」を単独で考えてしまうと現実離れしてしまうこともありますが、家相の知恵と建築の知識を併せて考えることができれば、現代の機械設備に頼り切りにならない、採光と通風に優れ、使い勝手もよい家を実現することができます。
家相に登場する重要な用語は「鬼門(表鬼門・裏鬼門)」「正中線」「四隅線」「十二支方位」などがあり、玄関・門扉、吹抜け、火気(ガスコンロ)、トイレ、浴槽などの位置が制限されます。家族の生年月日に基づく十二支方位を避けなければならないのは骨が折れましたが、一度はまってしまえば逆に変更はあり得ません(笑)事実、2階の間取りは一発で決まりました。

三つ目の特長は、標準外の仕上げや仕様を多く取り入れたことです。
それと同時に奥様はデザインについての要求も高く、自然素材でつくるモダンな木の家を目指しました。

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まず念には念を入れたシックハウス対策として、2階はクロスを一切使いませんでした。LDKの天井はヒノキ板張りとし、それ以外の天井には大理石の粉と天然接着剤を主成分とした塗料(フェザーフィール)を塗りました。壁は居室に限らず全て漆喰塗りとしています。

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そんな中で、子供室の一面にだけ粘土や鉱物を原料にしたドイツの塗料(クレイペイント)を塗ってアクセントにしました。

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リビングの一面はスギ板張りに濃色の自然塗料でアクセントウォールにしました。他に、洗面コーナーとダイニングの一部にはガラスモザイクタイルを貼ってポイントにしています。

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また、リビングから水回りが丸見えにならないよう、しかし風通しも阻害しないように設けた格子壁は、リビングの雰囲気づくりに一役買うとともに、玄関からリビングに回り込む際にわくわくする感じをつくり出しています。

引越しをされた後しばらくして、設計を担当した高橋と私に加えて、現場担当の伊藤、大工棟梁の杉山が新居に招かれました。
小宴の場を設けてくださったお施主様ご家族の心からの笑顔に接し、こちらも嬉しい気持ちにさせていただいたとともに、家づくりの悦びを再確認できたことを思い出します。

岸 未希亜

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