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2012.12.24 / 建築と住まいの話

上棟ラッシュ

先月は静岡県内で2棟、岐阜県内で2棟、偶然にも計4棟の家が連続して棟上げするという「上棟ラッシュ」でした。
そのうちの1棟は熱海に建築中の当社大工の自邸で、他の3棟はアースデザインオフィスで手掛けている住宅です。
半年前のブログで、アースデザインオフィスでは静岡、岐阜、長野で6件のプロジェクトが進行中ということを報告しましたが、岐阜県と長野県の家が1棟ずつ竣工し、新たにまた岐阜県と長野県で設計の依頼があったため、現在も6件が動いている状況です。

それでは11月に上棟した住宅を簡単に紹介します。

1棟目は岐阜県多治見市の住宅で、来春に結婚を控えている若いカップルのお住まいです。

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上棟から2週間が経過しているため、ご覧の通りすでに瓦が葺かれています。

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1階天井はできるだけ2階床梁を見せるように、梁せいを大きくして天井も少し高めにしています。

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LDKの南側(外)には柱を立てて深い庇をつくり、昔ながらの縁側空間を再現しています。

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完成イメージはこのような感じです。
建て主の年齢は若いのですが、和瓦の重厚な屋根や1階部分の外壁を板張りにするなど、和風のデザインを身にまとったエアサイクル工法の住宅です。

2棟目は岐阜県本巣市の住宅で、子世帯+親世帯+祖母という4世代が暮らす大家族のお住まいです。

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61.7坪と建物が大きく、いつもと勝手の違う造り方ということもあって上棟に数日を要しました。

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施工会社の社員でもある建て主は、間取り、素材、デザインに加えて、気密・断熱性能にもこだわっていて、壁も天井も寒冷地仕様の断熱性を実現しています。そのため柱はほとんど隠れてしまいますが、木ズリに土を塗って漆喰で仕上げるという本格的な左官仕上げも見どころです。

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小屋組みには登り梁を採用しています。斜めに架かる登り梁と水平の棟木や桁に何気なく火打ち梁が入っていますが、これはかなり面倒な仕事だと思います。

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完成イメージはこのような感じです。
南面する2階建ての部分に、2つの下屋が突き出す形で中庭を囲んでいて瓦葺きの落ち着いた佇まいです。引越しや既存住宅の解体もあって基本設計からすでに1年、完成までさらに1年近くかかる住宅です。

3棟目は静岡県静岡市(旧清水市)の住宅で、夫婦+子供1人との打合せでしたが、間もなく第2子が誕生する4人家族のお住まいです。ご主人が使う予定の部屋は思ったより早く子供に取られてしまいます(笑)

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敷地のすぐ裏が静岡鉄道の軌道敷きで、部屋の窓から電車が走っているのを眺められます。編成が短いので意外に音は気になりません。

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敷地の間口が狭く両隣りの家に挟まれるような環境のため、2階リビングを提案し、登り梁を中央に架けた大らかな空間をつくりました。屋根の頂点をずらすことでLDKと連続するロフトも生まれました。

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ロフトの窓から首を出すと東の方角に富士山がよく見えます。私たちが目にする東からの富士ではなく、西からの富士です。現場では、屋根の上に富士見台をつくりたいね、という話が出ていました。

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完成イメージはこのような感じです。
建物巾の狭い方ではなく長い方に勾配屋根を向けているため、軒先の水平線だけが目につくすっきりした印象の外観です。
建て主は左官職人で、この家の漆喰を塗るのは勿論のこと、大工をはじめとする仲間の職人たちと「自分たちの家づくり」を展開しようとしています。この家は、そのモデルハウスとしての意味をもつ住宅です。

4棟目は静岡県熱海市の住宅で、当社で活躍してくれている大工とその家族のお住まいです。

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家の規模は小さめですがあえて総2階にはせず、上の屋根と下の屋根で建物に陰影をつくろうという大工こだわりの外観です。屋根の上からは海が見えるそうですが、残念ながら2階からは見えません。

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大工の手刻みによる架構です。見せ場には追っ掛け大栓継ぎ、台持ち継ぎといった手刻みならではの継手が見られます。自分の家を「自分の手で造る」という感覚は最高でしょうね。

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LDKと和室の交点であり建物の中心には、桧の大黒柱があります。太い梁が交差する「四方差し」の部分なので、6寸の大黒柱は意匠の面だけでなく構造的にも大きな意味を持っています。

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建て主であり大工の杉山棟梁です。男前ですね(笑)
普段の仕事では、建て主や設計者の意図を確認するための電話がかかってきますが、今回は自分で考える時間が長くなっているようです。違い棚のある床脇を設けたり、長押を回す本格的な和室の造作など、私も完成を楽しみにしています。

岸 未希亜

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