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2013.01.28 / よもやま話

ナインアワーズ

「ナインアワーズ」って何のことだろうと思った方も多いでしょう。和訳すれば「9時間」ということになりますが、これはあるビジネスホテルの名前です。ビジネスホテルの平均滞在時間が9時間であることから命名されたそうです。
京都に出張した昨秋、紅葉の時期と重なってしまったためにビジネスホテルはどこも満室で、予約が全く取れませんでした。そこで検索に引っ掛かったのが「ナインアワーズ京都寺町」だったのです。
このホテルは2009年12月にオープンしたカプセルホテルなのですが、客単価を下げて集客するのではなく、デザインによって集客を図る方針を掲げ、プロダクト・サイン・インテリアの各デザインに力を注ぎ、2010年のグッドデザイン賞を受賞しているホテルです。当時、建築雑誌にも取り上げられていたので、自分も写真で見た覚えがありました。
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京都の繁華街である四条河原町から徒歩数分、「寺町通り四条下る」と言えば、京都に明るい人なら迷わず行けると思います。かつて町家が建っていたことを偲ばせる狭い間口と奥行きの長い敷地に、うっかり通り過ぎてしまいそうな控えめなサインと外観。床・壁・天井の仕上げが真っ白なのに対してスタッフの服装は真っ黒というモノトーンの世界が、多少の緊張感を生み出していました。
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カプセルホテルを利用すること自体が初めてだったので、他所と比較できないのですが、ここでは1階(フロント+ラウンジ)を除いて、ロッカー&シャワー、スリーピング(カプセル)のフロアは完全に男女で分かれ、エレベーターも区別してあります。それは扉に描かれたサインを見れば一目瞭然(笑)
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男性は最上階にロッカー&シャワールームがあり、フロントで渡された鍵でロッカーを使います。通常のロッカーの半分の高さしかないので、冬場はコートを吊るせないのと小型の荷物しか入らないのが難点です。ビジネスユースであればほとんど問題はないでしょうが、大きなスーツケースを持って来た観光客などはフロント前のスペースに並べていました。
各スペースは床の上に描かれたサインで示されているので、外国人や子供でも分かりやすいと思いますが、むしろ日本人の大人の方が迷ってしまうかもしれません。
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ドアがいっぱい並んでいるシャワールームは、脱衣場とタイル貼りのシャワー室に分かれていますが、てっきり個室だと思って使っていたら、奥で一つにつながっていて大きな浴槽がありました。繋がっていることに気付かないでシャワーを浴びていて、目の前を他人が裸で歩いていたらびっくりするでしょうね(笑)
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ここが寝室フロアです。2段ベッドのように寝台が並んでいるのは、一般的なカプセルホテルと同じだと思いますが、「黒い部屋の中の丸みを帯びた白いカプセル」という対比が、不思議な感覚をもたらします。
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枕元には時計やスイッチが並んでいますが、「寝室環境システム」というユニークな機能がありました。これは、起床時刻を設定すると室内がゆっくりと暗くなり、翌朝、起床時刻に近付くと徐々に室内が明るくなって爽やかに目覚めさせるというものです。アラームはなく、ケータイ電話のアラームは使用禁止となっていました。これで本当に起きられるのか、半信半疑で眠りましたが、何と設定時刻に目が覚めたのです。その時の室内は昼のように明るくなっていました。
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カプセルの出入口はロールスクリーンを下げる形だったので、完全に周囲の音が遮断される訳ではありません。そういう点では、物音に敏感な人だと安眠できないかもしれませんが、自分は快適な睡眠をとることができました。1分以内に眠れる寝つきのよさと、一度眠ったら赤ちゃんが泣いていても目が覚めない私だからかもしれませんが。

岸 未希亜

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