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2013.03.24 / 建築と住まいの話

建築写真展「日本の民家」

先日、新橋のパナソニック汐留ミュージアムまで行ってきました。開催されていたのは「日本の民家一九九五年」と題された写真展で、写真家・二川幸夫氏が若い頃に日本中を歩いて撮影した様々な「民家」が展示されていました。

民家パンフ.jpg

展示されている写真については、チラシの紹介文から引用します。

「1957年から1959年にかけて発行された『日本の民家』全10巻は、日本が国際的な経済発展に向けて飛躍しようとしていた頃に、あえて民家の最後の美しさにカメラを向けて、世間を瞠目させました。大地とつながる民家の力強さ、そしてそこに蓄積された民衆の働きと知恵をとらえた280点のモノクロ写真は、現在、国際的に高く評価される二川幸夫が20歳前後に撮影したものです。」

「民家」というのは、貴族や武家の住宅と対立する概念として農民、職人、商人、漁師など庶民の住まいのことを指しています。
昔の住まいである「民家」は職住一体の併用住宅であったため、厩(うまや:馬小屋)と一体の「曲り屋」と呼ばれる民家があったり、養蚕のために茅葺き屋根の小屋裏に光や風を採り入れる工夫をした「合掌造り」「かぶと造り」「突き上げ屋根」など、その形態(外観)に大きな特徴が現われるのが面白いところです。

また地域性、風土性の影響も大きく、山間部の民家では手に入れやすい板で屋根を葺いて石を置いて押さえた「板葺き」が見られますし、家が密集する京都や奈良の町家では、防火対策として外壁や軒裏を漆喰で塗り回す「塗り屋造り」が見られます。

民家写真.jpg

この写真は、豊後水道に面した愛媛県南端の外泊という傾斜地の集落ですが、台風の通り道で強風を受けることが多いため、家の前に石垣を築いたり屋根瓦を漆喰で塗り固めたりしています。まさに風土性を宿した「大地とつながる」姿で、モノクロ写真の迫力もあって大きな感動を覚えます。

展覧会は2013年1月12日から3月24日まで開催されましたが、その会期中である3月5に二川幸夫さんは亡くなられました。開会直後の記念講演会にも元気な姿を見せたおられたようですが、世界中を旅して名建築を追い続けてこられた偉大な写真家の死を悼み、ご冥福をお祈りいたします。

岸 未希亜

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