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2015.05.21 / 建築と住まいの話

大磯M邸 完成見学会の見どころ

今週末に見学会を開催する「大磯町M邸」の見どころを紹介します。

建て主は、社会人の息子2人をもつご夫婦で、長く暮らしてきた既存家屋を壊して、終の棲家を建てる計画です。幾つかの会社を見て回った後で当社の見学会に参加されたご夫婦ですが、実は奥様の姉夫婦が約3年前に当社で家を建てており、姉夫婦の勧めもあって当社を選んでくださいました。

mkt1.jpg  既存家屋と隣家
mkt2.jpg  既存家屋と庭

北側に山を背負い、南側に東海道の松並木が見える、大磯らしい恵まれた自然環境の中ですが、北と東は境界に接するように家が建っていて、道路から見ると窮屈な感じが否めない敷地です。したがって、「周囲の家に迷惑を掛けたくない」という建て主のお考えには共感するところが大きく、ロフトがありながらも家の高さは低く抑えました。
一方、南は畑が広がるなど視界が開けているため、家の中からは、南に視線が向くようなプランを考えました。周囲の緑を上手に借景しているので、狭小地の事例としても参考になる建物です。

「こもれる大人部屋のある家」と題したこの家は、広いリビングよりも、各自のスペースを大切にした間取りが特徴です。

「住まいの教室」でもお話ししていますが、住宅を設計する時に、子育てが「ある」か「ない」かということが一つの分かれ目になります。前者の場合、できるだけ家族の気配を感じられるように、リビングを広くしたり吹抜けをつくったりしますが、後者の場合は人が集まることも少なくなり、リビングを広くするよりも、個のスペースを充実させる方向で考えます。
ただし、家を50年、100年のスパンで考えるとすれば、「子育て」がある時期とない時期を繰り返しますので、あまり限定的な造りにすることも良くありません。永く住むためには、バランスが大切です。

敷地は少し狭いのですが、「総2階」にすると2階が余ってしまうため、奥様の部屋を2階建て部分から南に張り出しました。

mkt3.jpg

今まで北側の暗い部屋を使っていた奥様にとって、明るい南側の部屋は達ての希望でしたので、完成した姿を見てご満足いただけたようです。また、2枚の建具を引き込むとLDKと一体の空間になるため、日中は1階全てが奥様のスペースとして使えます。

LDKは約15帖しかないコンパクトな空間ですが、対面キッチンからも大きな窓越しに緑豊かな景色が眺められ、明るさも十分です。

mkt4.jpg

畳に座る方が楽ということなので、食事はダイニングテーブルを使いつつも、仏壇を置くことのできる小上がりの畳スペースを組み合わせました。造り付けのテレビ台や食器棚、畳下の引出し収納など、丁寧な大工仕事も見応えがあります。

2階には3つの個室と納戸、そしてロフトを設けました。

mkt5.jpg

2人の息子たちは、以前の家では広めの部屋を分けて使っていましたが、ここでは待望の個室が与えられました(笑) 南面に並べたこの「大人部屋」は、造り付けの収納で間仕切っていますが、2人が巣立った後は、間仕切りを壊して一部屋にすることができます。

「こもれる大人部屋」を一番必要としていたのは、オーディオで音楽を楽しむご主人です。明るさよりも静かな環境を望まれて選んだ北側の部屋に、前の家と同じように椅子やスピーカーを配置します。

屋根の高さを活かしたロフトは、一緒にテレビゲームを楽しむ兄弟のため、お互いの部屋とは別に設けた隠れ家のようなホビースペースです。ここが最大の「こもり部屋」かもしれません(笑)

いつものような「広がり空間」とは少し違いますが、「子育て」がない家ならではの生活シーンを想像することで、この家の魅力を感じていただけると思います。

岸 未希亜

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