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2015.08.23 / 建築と住まいの話

連日の棟上げ

長野で進めているアースデザインオフィスのプロジェクトについては、4月にブログでお伝えしていましたが、お寺の庫裡(くり:住職や家族の住まい)の方は設計契約を行い、現在は実施設計を進めているところです。
一方、長野駅に近い場所で計画している住宅の方は、先週、棟上げが行われたので、北陸新幹線に乗って長野へ行って来ました。

長野駅ではいつも東口で送迎してもらうことが多く、善光寺口は滅多に利用しません。そのため駅舎の建て替え工事にずっと気付かなかった私ですが、春に来た時、その変貌ぶりに大いに驚きました。

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上写真は3年前に撮った駅前です。善光寺口は商業ビルが建ち並び、官公庁や善光寺も控える表側にあたるのですが、県庁所在地で新幹線も停まる駅ながら、ローカル色の強い駅舎・駅前でした。
それが下写真のように刷新され、列柱と屋根でつくる軒下空間が近代的でも日本的でもあり、非常にいい雰囲気です。

午後3時頃に現場に着くと、既に棟も上がり、ほとんど形になっていました。

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この住宅は、ご夫婦が社会人のお嬢さんと暮らすお住まいです。大人3人が住むということで、食事のスペースを中心としたLDKをつくり、仏間(和室)を連続させました。また、書道の先生をしているご主人は、寝室を兼ねた書道部屋が必要だったので、この畳敷きの部屋も仏間に連続させました。コンパクトにまとまった2階に比して、1階の屋根が東西に長く延びているため、屋根の存在が際立つ姿になっています。

長野での上棟後はいつも、手伝ってくれた大工さんをはじめ、瓦屋さん、設備屋さんなど、職人さんたちとの打ち上げです。上棟で顔を合わせるのが1年に1回ぐらいのペースなので、同窓会のような感じです(笑)

長野に泊まった翌日は、夕方に藤沢で棟上げがあるため、現場での打合せを午前中で終わらせて藤沢へ引き返しました。
2日目は、絵を展示するための建物、ギャラリーの棟上げです。

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建物は、展示室を中心に、受付、談話室、館長室、倉庫などで構成されています。展示室は一般的な住宅よりも高い天井高が求められ、木材の経済性も考慮して4mの柱を使うことにしました。そして、天井高を確保すると同時に木造空間の心地よさも残したかったため、屋根の構造体を室内に見せる形を提案。
さらにギャラリーという性格を鑑み、よりシンプルな架構にするため、住宅では滅多にやらない片流れ屋根にしました。登り梁を3尺ピッチに並べた片流れ屋根は、極めてわかりやすい構造です。

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これは鉄骨の螺旋(らせん)階段です。毎日の昇降を考えると、住宅で使おうと思ったことはありませんが、この建物では、階段に場所を取られたくなかったことに加え、館長室専用の階段ということもあって採用しました。
また、展示室に大きな窓がないため、この螺旋階段は屋根をつくる前に設置しました。試しに登り降りしてみましたが、非日常感があって楽しい階段です(笑)

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棟上げの作業が終わると、簡略化した上棟式を行って解散するのが常ですが、この日は建て主のご厚意で、宴席を用意していただきました。大工さんたちは暑さと疲労でぐったりしていましたが、振る舞われたお寿司とノンアルコールビールで、心なしか元気を取り戻したような気がします。

さてこのギャラリーは、画家・山内龍雄の作品を展示するために計画されました。クライアントは、画家と二人三脚で歩んできた画商の須藤さんです。25年間をともにした同志を一昨年の暮れに亡くした須藤さんは、山内さんのファンに絵を見てもらうため、そして彼の作品を世に残すため、ギャラリーの建設を決めました。
このような強い想いのこもった建物を私たちに託していただけたことは、たいへん嬉しいことですし、これから先の自信にもなります。皆様も完成を楽しみにしてください。

岸 未希亜

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