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2016.01.11 / 建築と住まいの話

山内龍雄芸術館 完成見学会の見どころ

今週末に見学会を開催する「山内龍雄芸術館」の見どころを紹介します。

建物名称を見て分かるように、この建物は住宅ではありません。これまで専ら住宅を造ってきた神奈川エコハウスが、そして神奈川エコハウスにいる自分が、住宅以外の設計を依頼されるとは思ってもみませんでしたが、このお話をいただいた時は気持ちが高ぶりました。

独学で絵の制作を重ね、独自の技法を編み出した孤高の画家・山内龍雄。建て主は彼を支え続け、二人三脚で歩んできた画商の須藤さんです。画家に先立たれた須藤さんは、「山内龍雄を世に残す」ため、彼の作品を展示する建物を造りたいと考えました。

そして、依頼先を決めるために地元の建築会社を幾つかピックアップしていた須藤さんは、当社コンセプトハウスにも来場されました。その3日後に須藤さんのアトリエを訪れることになり、私も初めて須藤さんにお会いし、山内さんの絵を見せていただきました。
私の父も画家で、「絵で食っていく」ことの難しさは子供のころから聴かされていたため、須藤さんが語られる画家・山内龍雄の壮絶な人生には、ふつうの人以上に感じるものがありました。そして、それを支え続ける画商の生き方に、より深い関心を覚えたことを思い出します。
山内龍雄の話を聴くと、「私の父は画家だった」とはとても言えないと思いましたが、須藤さんは来社時に社員から聞いていたそうで、そのことで親近感を持ってもらえたのは幸いでした。

建物の計画にあたっては、当社が得意とする木造技術を活かしながら、住宅とは違った木造の空間に挑戦しました。住宅では封印している片流れ屋根を採用し、その形が外からも室内からも印象的な建物です。

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室内は、片流れ屋根の明快な構造を現わす一方、壁の存在を際立たせたモダンな木の空間です。特に4mの柱を使った展示室は、大きな絵が映えるような背の高い白い壁と、間口3間に架け渡した「登り梁」のリズム、そして鉄骨の螺旋階段が印象的で、一般住宅とは少し異なる空間体験ができます。
カフェ、美容院、診療所、保育所など、ギャラリー以外の用途を想像しながら見ていただくのも面白いと思います。

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展示室の隣は談話室で、絵を見に来た人がベンチに腰掛けて談笑できるスペースです。談話室の天井は高さを少し抑え、2階の床組みを現わした木質感に溢れた空間です。床は屋外デッキへと連続し、外にもベンチが備え付けられています。デッキ越しに隣家の木々を借景し、室内に居ながら自然も感じられるので、展示室とは違ったリラックスした空気が流れています。

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談話室に接して本棚のあるエントランス、受付、物販コーナー、トイレを設け、展示室の奥には絵画を収納するための倉庫を造りました。

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展示室内の螺旋階段を昇ると館長室があります。書斎机を置いて須藤さんが過ごすほか、来賓をもてなすこともあるでしょうし、畳コーナーがあるので、寝転がって寛ぐこともできます。ここはプライベート空間なので、この完成見学会でしか見ることはできません。

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山内龍雄芸術館の正式オープンは4月のため、今回は絵画の展示はありませんが、昨年11月にもご案内した「山内龍雄展」が奇しくも1月17日まで、長野県の梅野記念絵画館で開催されています。お時間があれば、こちらにも行ってみてください。
住所:長野県東御市八重原935-1 アクセス:車/上信越道・東部湯の丸インターから車で15分 電車/北陸新幹線・上田駅から、しなの鉄道に乗り換え田中駅下車、タクシー15分。詳細は山内龍雄展HPをご覧ください。
 
岸 未希亜

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