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2016.04.27 / 建築と住まいの話

海老名T邸 完成見学会の見どころ

今週末に見学会を開催する「海老名市T邸」の見どころを紹介します。
「お寺の境内に建つ家」と題したように、住職とそのご家族が建て主です。昨年2月に初めてお会いしてから何度かお寺に伺った後、4月にちょうど庫裡(寺の住職が暮らす家)の完成見学会があったため、住職ご夫妻どうしで顔を合わせていただき、「当社で家を建てて良かった」と後押ししてもらいました(笑)

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本堂の増築という形で造られた以前の住宅は古く、家の中に物が多く残されていたため、リフォームしたばかりの新しいキッチンと、リビング・ダイニングだけが使われている状況でした。そして、法事に使用する建物の一部をリフォームした浴室が長い廊下の先にあり、寝室は別棟の2階を利用しているため、一度外に出なければならず、不便な生活を強いられていました。
ふつうに新築するだけでも、この不便さからは脱却できますが、幾つかいただいた要望に幾つかの提案を加え、とても魅力ある住宅が誕生しました。

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特徴の一つは、「高齢のお父様と暮らす3世代の住まい」ということです。
1階に設けるお父様の寝室(個室)は、部屋で過ごす時間が長くなっても大丈夫なように、日当りのよい南東角に配置しています。トイレ、洗面室、浴室が部屋のすぐ近くにあるのは必須条件ですし、トイレは車椅子でも使いやすいように、1坪サイズの広いスペースにしました。

1階に6帖の寝室を設けたことで、リビング・ダイニングの面積は少し抑え目ですが、「リビングを兼ねる10帖のダイニング」というご要望通り、10帖のリビング・ダイニングを用意しました。

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スタディコーナーや廊下部分、キッチンとの繋がりもあるので、数字以上の広がりが感じられます。また、間接照明によって室内の雰囲気も上々です(笑)

二つ目は、「キッチンの使い勝手と動線計画」です。珍しいケースですが、前の家で2年しか使っていないシステムキッチンを再利用しています。

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当初は対面キッチンも検討しましたが、吊戸棚があると閉塞感が強くなることや、前の家で使っていた外付け食洗機のスペースを確保するため、壁向き型になりました。対面側には家電やゴミ箱を置く造り付けカウンターと食器棚を設け、食品庫も一体になった広めのキッチンです。
ダイニングを経由せず、玄関からショートカットできる裏動線が便利なほか、寺院施設への連絡口もキッチンのすぐ横に設けてあるので、お寺から呼ばれた時の移動もスムーズです。

三つ目は、「室内物干場を兼ねた共用スペース」の存在です。
当初から「リビング・ダイニングか2階廊下に本棚がほしい」という要望がありましたが、プランの打合せ中に「室内物干場もほしい」という要望が加わり、第2案でこの形が生まれました。

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長さ350cmもある本棚には、子供の絵本も親の蔵書も収められ、子供にとっては素晴らしい環境です。そして南面にハキダシ窓のあるこの共用スペースは、室内物干場にもうってつけです。さらに窓の外にはベランダがあり、屋外干しと室内干しの動線が一つに集約されていて便利です。
「ベランダ」とは屋根のあるバルコニーのことを指すのですが、洗濯物が雨に濡れ難いベランダがあると、共働きのご夫婦には重宝だと思います。
またベランダは、構造上、建物と一体の造りになるため、建物の外観も良い感じになりますし、防火シャッターの存在も目立たなくしてくれます。一般的に、軒を深く出すためには柱を立てる必要がありますが、柱を立てずに軒を深くしている点もご覧ください。

敷地がお寺の境内であることを除けば、ふつうの家と大きな違いはありません。子育て家族を中心に、どなたにも参考になるお住まいです。

岸 未希亜

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