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2016.11.09 / 建築と住まいの話

多治見の家 その2

アースデザインオフィス設計の住宅を紹介する第2弾です。第1弾を書いたのは、もう3ヶ月前になりますね。歳をとったせいか、時の流れが早くて驚きます(笑)

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2015年に竣工したこの住宅も、岐阜県多治見市の早川工務店が施工しました(早川工務店との関係については第1弾をお読みください)。

建て主は、夫婦と子供2人の4人家族。主たる要望は、みんなで集まるリビング、リビング階段、1階と2階をつなぐ吹抜け、風通しのよい間取り等、私が普段から実践している設計内容と合致していましたが、「道路に面して3台分の駐車場+屋根付きの駐輪場」という希望は、夫婦一台ずつが当たり前の、地方都市ならではの要望でした。
また、ご主人の趣味は絵を描くことなのですが、「夫は、自分が趣味でこもれる部屋がほしいと思っているが、妻は夫にこもってほしくない」という微妙なニュアンスの要望もありました(笑)

手先が器用で、細かな作業も苦にしないご主人の要望書は、細部までぎっしり書き込まれていましたが、プランは一回で決まりました。冷蔵庫と食品庫の位置を入れ替えた以外、最初の設計通りになっています。

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「道路に面した3台分の駐車場」は、どうしても冷たい印象を与えてしまうので、背後を板塀にして、庭との間を柔らかく仕切りました。リビングを丸見えにしない目隠し効果も期待できます。外壁は2階部分を吹付け仕上げ、1階部分を板張りにしているので、締まった印象になっています。

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土間からも床からも入れるシューズクロークがあり、玄関は常にスッキリ。さらに、雨に濡れずに駐輪場まで行くことができます。玄関からLDKに至るスペースは、子供の本や図書館で借りて来た本を入れる小さなライブラリーです。上に掛かっているのは、この家の上棟の様子を描いたご主人の絵です。地元の絵画展に入選するほどの作品です。

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家族が集まるを場所を魅力ある空間にするため、上に2階が載らない下屋にリビング・ダイニングを配し、板張りの勾配天井にしました。南側の大開口部は、障子を戸袋にしまうことができます。キッチンの壁に貼っているボーダータイルは、もちろん美濃焼タイルです。

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子供部屋の前には、廊下と細長い吹抜がありますが、室内物干場も兼ねています。写真手前の1坪のスペースと吹抜上部は、午後の日当りが良いので洗濯物もよく乾きます。また、少し奥まったキッチンに光を落とす役割も果たしています。

建物が完成してから初めての訪問でしたが、とても綺麗に住んでおられて、嬉しくなりました。庭木が育ってくる数年後の佇まいも楽しみです。

住宅事情が異なる神奈川・東京では、このようにゆったりとした敷地での計画は滅多にありません。今週末に行われる「住まいの教室」でも、第二部「敷地の状況から生み出される住まい」では、日当りの悪い細長い敷地や狭小地などの難条件を、どう克服するかが主なテーマになっています。

一方「多治見の家」のような、広くて恵まれた敷地条件では設計の自由度が高く、一見すると楽に設計できるように思えますが、逆に難しさもあります。設計の根拠を「敷地のせい」にはできないので、設計の思想や技術が問われるからです。

岸 未希亜

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