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2013.04.27 / 建築と住まいの話

「清水の家」が完成しました

アースデザインオフィスで設計を行った「清水の家」が完成しました。

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この「清水」は清水エスパルスでお馴染みの、サッカーどころ旧清水市(現・静岡市清水区)のことです。
それではまず初めに、この住宅を設計することになった経緯をお話しします。
無垢の木を使った「いい家」を建てようと考えていた建て主ご夫妻は、インターネットで情報を集めていたところ、当社のホームページが目に止まったそうです。そして実際に見に行ってみよう、ということで清水から藤沢まで遠路お出でくださいました。
たまたま接客をしたのが私だったのですが、コンセプトハウスを見学したご夫妻とお話をしたところ、ご自身が左官職人のご主人は「仲間とこういう家を建てたいと思っているんです」と熱く語られました。私の方からは、他県で設計だけの仕事もしている旨を伝えましたが、この時は「仲間とやるのなら、ご縁は無さそうだな」と思っていました。

それから約1ヶ月後、「岸さんに設計をお願いしたいのですが・・・」という電話がかかってきたのです。小躍りしたい気持ちを抑えながら、努めて冷静に受け答えました(笑)。後で聞いた話ですが、何を気に入ったのかを言葉で説明するのは難しいけれど、コンセプトハウスの空間がご夫妻の感性に響いたのだそうです。

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後日、ヒアリングと敷地視察のために清水へ伺いました。敷地は南北にやや細長い形状で南側に道路があり、北側は静岡鉄道の軌道敷きに接している珍しい環境です。東側には先に完成した家が2軒並び、西側もこれから宅地分譲される予定ということで、東西面は軒が接するような状況になり、大きな窓を開けられるのは南北面だけでした。
またご夫婦で各1台、来客用に1台という3台分の駐車スペースを必要とするため、庭をつくる余裕がありません。さらに間口いっぱいの四角形の家にした場合、貴重な1階の南側に玄関が来てしまうため、リビング・ダイニングの開放感や居住性が物足りなくなることが懸念されました。

そこで提案したのが、2階にLDKを上げてしまう逆転プランです。
2階リビングは、庭がないこと、勝手口がないこと、玄関から子供部屋に直行できてしまうこと等の短所がありますが、代わりに家で多くの時間を過ごすLDKに、豊かな居住性や空間性をもたらすことができます。

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また屋根勾配を長手方向に振り分けると、建物中央に小屋裏空間が大きく取れます。さらに屋根の食い違いを利用することで5帖の広いロフトを確保し、採光と通風に効果のある高窓を設けました。このロフトはLDKと一体の空間になっており、収納としてよりもホビースペースや書斎としての利用が見込まれます。

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この家は外壁も内壁も全て左官仕上げです。建て主でもあるご主人が自分で素材を選択し、自ら仕上げられました。そして木工事を担当した大工の市川さんは、木組みを見せたり特殊な出窓を造ったりと、慣れない大工仕事を見事にやり遂げられるとともに、工事全体を見事にまとめてくださいました。

お二人は工事前に一緒に藤沢まで来て、コンセプトハウスや当社の工事現場を見学するなど、勉強熱心な姿がとても印象的でしたが、地元ではこの2人を中心にした仲間たちで、今後もこのような家をつくって行きたいと計画を進めています。
「清水の家」は、そのモデルハウスとしての位置付けを秘めているプロジェクトで、私もパンフレットの作成や家づくりのための勉強会をお手伝いさせていただきました。
このように設計だけでなく、工務店支援という分野もアースデザインオフィスの大切な仕事になっています。
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1.永く住み続けられる家
2.人と環境に優しい家
3.造り手の顔が見える家

ここに掲げた3項目は、彼ら「清水の仲間たち」のために考えた「私たちの考えるスタンダード」ですが、同時に、私たち神奈川エコハウスも常に意識して取り組んでいることです。

岸 未希亜

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