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2012.05.29 / 建築と住まいの話

「茅ヶ崎A邸」完成見学会の見どころ

今週末、6月2日夜と3日に完成見学会を行う「茅ヶ崎A邸」について解説します。

このお住まいは、当地に永く住んでおられるご夫婦が、ひとつ屋根の下に子世帯を迎える二世帯住宅です。

二世帯については当社のセミナーでも話をしましたが、世帯双方に数々のメリットがあるので、当社も毎年のように二世帯住宅を建築しています。

例えば、親世帯は孫との交流が増え、時には預かって一緒に暮らすことで活力を得ることができたり、夫婦旅行で家を留守にする時も安心だったり、老後の心配も軽減されます。
子世帯にとっては、育児の協力をしてもらえたり、時には夫婦での外出もできたりしますし、何といっても土地を新たに買うことなく、資金を住宅に投入できる点が大きなメリットです。

二世帯にも幾つかの形がありますが、親世帯が若くて元気な場合、特に都市部では互いに気兼ねなく自分たちの暮らしに集中できる「半同居型」や「独立型」が好まれます。
今回は、玄関だけを共有して他の空間は1階と2階に分かれる「上下分離タイプの半同居型」で計画しました。

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さて、この住宅は「日向を求めて雁行する二世帯住宅」です。

敷地は76坪もあって広い部類に入りますが、南側隣家の影響を受けやすい東西に長い形状のため、親世帯が住む1階の日当たりを考慮して、南東側に開くような雁行型の平面計画としました。

東側からリビング、ダイニングと並び、その南側には8畳の座敷が張り出します。この座敷と寝室は南からの日照を期待できませんが、東西の窓から光や景色を採り入れます。
ダイニングの北側には、食器棚、家電棚、食品庫に囲まれた使いやすい対面キッチンがあり、短い廊下の先にまとめられた西側の水回りも使い勝手のよい配置です。
そして桧板張りで連続させた浴室と洗面所は、桧の香りが漂う温泉旅館のような贅沢な空間です。また建具は日本建築の華といいますが、和紙で鮮やかに貼り分けた座敷の襖も見どころの一つです。
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子世帯の住む2階は東側にダイニングとキッチンを配し、リビング、多目的室へと雁行して、1階同様に日照や採光を確保しています。
2階は道路からの視線がないため、東側にPCコーナーを設けて目の前に大きな窓を設けました。空や木々を景色として切り取る、たいへん気持ちのいい窓です。
床座で考えているリビングには造り付けのテレビ台以外に場所を取る家具がなく、桧の勾配天井と併せて伸びやかさを感じます。屋根裏を利用したダイナミックな空間の広がりは2階リビングの長所の一つです。

子供室は4帖×2室に分けられる8帖のワンルームで、子供の成長に合わせて間仕切ります。4帖という広さは確かに大きくありませんが、東側にリビングと一体になる多目的室が連続するため、ここを遊び場にしたり勉強スペースに充てることを目論んでいます。

子供に何不自由ない広い個室を与えるより、寝る部屋と遊ぶ(勉強する)部屋とに分けることで、親子が関わりを持ちやすいように仕掛けることも、間取りの大きな役割なのです。
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今回の見学会では、初の試みとなる夜の部を企画しました。昼の見学会では分からない照明計画についても体感していただくためです。

従来の日本の家の照明といえば、部屋の天井に高照度のシーリングライトを設置して「明るくする」ことを重視していたと思います。
しかし家の灯りは、キッチンなどの作業スペースを除けば、「明るすぎない」方がよいのです。
太陽が沈んで夜を迎えれば、身体は自然と就寝に向けた準備に入りますので、リラックスしたり、寛いだりする空間には、白熱球や電球色器具等の暖かい灯りを分散させると効果的です。
さらに各世帯のダイニングには、灯りだけでなくフォルムも美しい照明を使っているので、見ているだけでも癒される気がします。
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今回ご紹介するお住まいは、二世帯住宅としてだけでなく、2階リビングや照明についても体感できる貴重な機会ですので、ぜひ見学会に足をお運びください。

岸 未希亜

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