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2012.08.07 / 建築と住まいの話

茅ヶ崎の家

今年の初めに完成した茅ヶ崎の家を紹介します。
こちらのお施主様は、当社で家を建てられたお客様からの紹介で神奈川エコハウスを選ばれました。知人のお住まいを訪問されて家づくりの話もお聞きになり、安心してコンセプトハウスを訪ねてくださいました。

ご家族は、仕事をリタイアされたご主人と奥様、仕事に就いているご長男という大人3人の家族です。冗談の好きなご主人、声を出して楽しそうに笑う奥様、打合せに臨まれるご夫婦はいつも自然体で、打合せの雰囲気は和やかだったと記憶しています。

そんなご夫婦のお話によれば、30年前は深く考えずに家を買ってしまったとのこと。当時、ご主人は仕事が忙しくて家のことを考える余裕もなく、家は子供2人を育てるための場所だったようです。奥様は子育てが落ち着いた後は「家にいてもつまらなかった」ということで、旅行をしたり、美術館や買い物に出掛けたりして家にいることが少なかったのだそうです。
しかも家の中が薄暗いため、奥様からいただいた希望はずばり「明るく元気が出る家」でした。

そんな話をお聞きして、この家のテーマは「家での暮らしを楽しむ家」だと思いました。「居心地のよい空間」になることはいつも心掛けていますが、今回は外出を控えたくなるぐらいの魅力が必要です(笑)

それでは、この家の特長を紹介します。

一つ目の特長は、周辺の環境条件に合わせながら、その環境の変化にも準備していることです。

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付近は畑などが残る一方で各戸の敷地はあまり広くはなく、住宅が密集しているような状況でした。当地は幸いにも南側隣地が広い駐車場のため、現在のところ日当たりは抜群ですが、これを当たり前だと思って家を配置してしまうと、駐車場が宅地になってしまった場合に大打撃を受けてしまいます。したがって当面はこの環境を享受しながら、万一の場合にも居住環境が大きく損なわれないように、敷地南東部分にまとまった庭を残して、南西側にダイニング・キッチンを張り出した雁行プランとしました。

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ダイニング・キッチンは南面で明るく、リビングと和室はそこから少し下がって庭を囲むように南面していて、日照を得ながら空間が対角線に広がります。雁行形によってリビングに午後の日差しが届かないので、小さな吹抜けと高窓を設けました。上からの採光が得られると同時に、天井が高くなり過ぎず、ほどよい心地よさを生んでいます。

二つ目の特長は、遊び心を「かたち」にした幾つもの仕掛けです。

北側道路の家というのは建物が道路に近くなりますが、玄関が道路から丸見えになるのは落ち着きません。そこで西側隣地に沿って人を誘(いざな)うアプローチをつくり、玄関までの奥行きを演出しました。

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太い梁と小屋組みを現わしたキッチンは、ダイニングと一体の勾配天井で開放感に溢れています。そして造り込まれたお庭をダイニング越しに眺められる特等席でもあります。バックヤードには洗濯機、洗濯流しなどを備えたユーティリティを配し、家事のしやすさにもこだわりました。

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リビングと接する4畳半の和室は、琉球畳の表情と2面が開放されることによってリビングの一部のような空間ですが、襖を閉めれば客間にもなります。

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この襖は、開放されて押入や壁前に重なっている時(リビングと一体の時)は上下に色分けされただけに見えますが、部屋として使うために閉めると襖が5枚並び、鮮やかな市松模様が現われます。

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2階には吹抜けの上を利用したステップフロアを設け、奥様の書斎スペースにしました。格子壁で廊下からの視線を遮りながら風を通します。花粉や長雨の季節などは室内物干場にもなるのでたいへん便利です。

また、洗濯機をキッチン隣りのユーティリティに置いたので、洗面脱衣室はホテルのパウダールームを思わせる上質な空間にまとめました。機能的で美しい水栓、洗面器、拡大鏡、そして鏡の上下が光る間接照明が気分を盛り上げ、お化粧にも気合いが入るのではないでしょうか。


取材でお伺いした時に住み心地をお聞きすると、バスタイムや料理の時間が楽しくなったとのこと。そして冬は床暖房だけで十分に暖かく過ごせたそうなので、この暑い夏の住み心地についても、近いうちに聞きに行こうと思います。

岸 未希亜

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