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2013.01.14 / 建築と住まいの話

茅ヶ崎の二世帯 その弐

某ハウスメーカーが「2.5世帯」という新語を作るなど、「集まって住む」ことが見直され、核家族以外の様々な形が増えてきているようです。二世帯住宅の需要も今後は益々増えてくるのではないでしょうか。
さて、以前にブログで紹介した「茅ヶ崎の二世帯」とは場所も時期も比較的近いということで、今回のお住まいを「茅ヶ崎の二世帯その弐」として紹介します。

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茅ヶ崎市内の昔からの住宅地は道巾の狭い場所が多いのですが、今回は敷地の前が「道路」ではなく「蓋のされた水路」という特殊な状況でした。確かに車は入れませんが、歩行者や自転車がよく通り抜ける生活道路として機能していて、見た目は普通の道路です。
この計画もやはり、当地に永く住んでおられるご夫婦が、ひとつ屋根の下に子世帯を迎えるための建替えです。そして住宅会社を探す中で当社の家づくりを気に入ってくださり、コミュニケーションを深め、お住まいに伺って敷地を見た上でプランの提案を行いました。ファーストプランがほぼそのまま今のお住まいになっているので、私にとってもいい想い出です(笑)

それでは、この家の特長を紹介します。

一つ目は、玄関のみを共有して上下に分けた「半同居型」の二世帯という点です。

sono2-2.jpg「その壱」の住宅は玄関を2つ設けて内部の行き来をなくした完全分離の二世帯でしたが、この家は玄関を1つにして玄関収納も含めて共有し、その先で1階を親世帯、2階を子世帯に分けています。この形だと家に帰ってきた子世帯の家族が、親世帯のリビングに顔を出して挨拶を交わすのも自然ですし、逆に顔を合わさずにそっと2階に上がることも可能です。

二世帯住宅における子世帯のメリットは、土地の購入費が必要ないことの他に、夫婦での外出や共働きの場合に親世帯に子供の世話を頼めることが挙げられます。親世帯にとっては孫とふれ合う時間が持てるので、これは嬉しいことでもあります。
親世帯のメリットとしてはこの他に、夫婦での旅行などで家を空ける時に留守を頼める安心感や、歳をとった時に通院や介護を手伝ってもらえる安心感が挙げられます。普段は互いを尊重して別々に暮らしながら、必要な場面では互いに協力しやすい「半同居型」は、都市部で暮らす二世帯住宅の典型的な形だと思います。

二つ目の特長は、日当りと明るさを求めて雁行させた平面形状です。

sono2-3.jpg決して狭くはありませんが、敷地が東西に長くて南と西に隣家が迫っているため、建物の大きさを考えると1階の日照条件が良くありませんでした。そこで家が南東側を向くように建物を雁行させ、採光と視線の抜けを確保しました。

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sono2-5.jpg1階は東からリビングとダイニングが並び、南側に6畳の座敷が東を向くように張り出して庭を囲んでいます。リビングも座敷も窓に障子が入っており、和紙を通した柔らかい光に和まされます。ダイニングの北側にあるL型キッチンは、前述の家族スペースに開いた一体の空間ですが、背面に食品庫と勝手口があって家事のしやすい間取りです。

sono2-6.jpg座敷の西隣りに並ぶ寝室も南隣家の影響で日当りは良くありませんが、西窓からの採光で明るさは十分に得られています。

三つ目の特長は、使いやすい間取りとさり気ない意匠性でしょうか。

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sono2-8.jpg2階も同じように雁行していて、東からダイニング、リビングと並んでいます。ダイニングの東側は視線が遠くまで抜けるので、北側のキッチンからも空が見られる大きな窓を設けました。レースのカーテンの裏側に色味のあるロールスクリーンを吊るしていて、下ろした時もなかなか綺麗です。また、キッチンはアクセントカラーを入れたタイル貼りの壁が可愛らしい仕上がりですし、テレビ台上部の欄間は寝室の風通しを確保するための装置で、タイコ襖ですっきり見せています。

sono2-9.jpg子供室は8帖で、2人目が生まれた場合に4帖×2とする最小限のスペースです。そしてリビングとの間に6帖の多目的室を設けました。リビング南側のこのスペースを「部屋」にしてしまうと、リビングや北側にある寝室の居住性が損なわれることと、リビングに接する共用スペースに子供が出てきて親子の交流が図りやすいことを考えての設計です。

sono2-10.jpg1階の間取りは前述のようにLDKと一体になる和室があり、地袋と組み合わせた床の間が軽やかな印象を与えます。3本ある襖を引き出せば客間としても使えるとともに、ダイニング側から見ると市松模様が現われる遊び心を大切にしました。

sono2-11.jpg寝室の北側にはLDKから目隠しになる短い廊下があって、水廻りに連続します。動線が短く温度差もないので、就寝前だけでなく夜中にトイレへ行く場合も安心です。その洗面所と浴室はコンセプトハウスのような桧板張りの空間で、和風旅館のような風情を醸し出しています。

お住まいになってからも何度かお伺いする機会がありましたが、いつもお孫さんが1階で遊んでいたように思います(笑)日常の暮らしにおいて二世帯住宅の長所が活かされているとすれば、たいへん嬉しいことです。

岸 未希亜

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