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2013.04.15 / 建築と住まいの話

「鎌倉M邸」完成見学会の見どころ

今週末、4月21日に完成見学会を行う「鎌倉M邸」について解説します。

敷地は、海まで歩いて出られることを感じさせない落ち着いた環境です。しかしながら、隣に3階建てが建つような空の狭い住宅密集地のため、「いかにして家の中に陽射しを届けるか」と、家々に囲まれて周りの視線が気になる場所で、「ささやかな庭を手に入れること」を考えました。

お施主様ご夫妻はまだ1歳の小さなお子様との3人暮らし。この4月から育児休暇が終わって共働きを再開することになっていて、効率的に家事をこなしたいという強い希望がありました。
また奥様は、喫茶店などの「いい空間」に身を委ねて仕事や読書をするのが趣味というぐらい建築がお好きな方で、雑誌やインターネットで集めた住宅写真のコピーを満載した要望ファイルをお持ちでした。建築デザインに対する要求がこれほど高いお客様は、工務店や住宅会社に来るよりも建築設計事務所に設計を依頼するケースが多いと思いますが、アースデザインオフィスでの仕事も抱える私たちは、そんな奥様の想いに怯むことはありません(笑)。むしろ望むところでした。

当社コンセプトハウスの空間をたいへん気に入られたお施主様のために、吹抜けのあるコンセプトハウスのLDKをイメージして、大きな吹抜けの下にダイニング、前後にリビングとキッチンを配し、リビングの横に和室をつなげたL字型のプランをつくりました。北を頂点にしたL字にすることで、一日じゅう満遍なく陽が当たることが期待できます。
L字に囲まれた部分はダイニングと和室から出られる広いウッドデッキで、特に全開サッシが入っているダイニングからは、床が外へと広がっていくように感じられます。そしてリビングと和室を間仕切る3枚の襖を引き込めば、LDK+和室+デッキが一つになった大空間が広がります。

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和室の襖紙には、東京松屋の雲母入り鳥の子紙を採用しました。雲母(うんも)とはケイ酸塩鉱物のグループ名で、これを粉末にしたものを「キラ」と呼びます。顔料に「キラ」を混ぜた光沢のある絵の具は、昔から日本画で使われてきました。波模様を型押しした「さざなみ雲母紋(きらもん)」の襖は、一見すると大人しい色合いですが、自然光や照明の灯りで浮かび上がる紋様がとても上品です。

キッチンも見どころです。シンクとステンレス天板はオーダーキッチンメーカーekreaから取り寄せ、その下はワゴン類を入れられるようなオープンな設えの大工造りです。システムキッチンを見慣れた人には驚くほどのシンプルな造りですが、作業動線の短いL型のレイアウトと相まって、とても使いやすいと思います。また、対面でありながら冷蔵庫や食器棚、家電類が目立たないのは、L型キッチンの長所です。

子供が小さい時期は、子供部屋と吹抜けの間に壁を作らないことにしたので、2階は大空間が広がります。大きな吹抜けを設けたのは、隣家の影響を受けずに採光を得るためであり、もう一つは2階と1階がダイレクトにつながり、1階で家事をしながら子供の様子を感じられるためです。
また、趣味的な使い方と同時に洗濯物を室内干しできる空間として、2階寝室(畳敷き)の南側に内縁(板の間)を設けました。共働きの奥様にとって、不安定な天気の日は洗濯物が心配ですが、これで安心して出掛けられます。
2階の寝室にも東京松屋の襖紙「市松雲母紋(いちまつきらもん)」を使い、内縁との間仕切りには建築家・吉村順三考案の通称「吉村障子」を採用しています。

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このように、家事のしやすさを中心にした主婦目線の機能性と、居心地のよさを演出するデザイン性。この両者がバランスよく溶け合ったお住まいです。ぜひ、その目で確かめてみてください。

岸 未希亜

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