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2013.07.11 / 建築と住まいの話

土塗り壁の現場

先月、工事中のH邸現場で仕上げの打合せをするため、岐阜へ出張しました。

この家はアースデザインオフィスで設計している住宅で、基本設計をしたのは約2年前に遡ります。そして1年半前のブログでご紹介しましたが、この家は内壁を土壁にしているのが大きな特徴です。

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本格的な土壁の下地としては、真竹を四~八つ割りにした割竹を、格子状に組んだ「竹小舞下地」が一般的ですが、断熱・気密性能にもこだわりを持つ施主の意向により、柱間に充填した断熱材の内側に「木摺下地」を組んでいます。木摺下地とは、細く薄い杉板を目透かしに(少し隙間を空けて)張ったもので、土の剥落を防ぐために、ひも状の麻を二つ折りした「トンボ」と呼ばれるものを、釘打ちしています。

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リビングなど一部の天井は壁と同じように土を塗るため、天井にも木摺下地をつくっています。「トンボ」が天井から下がっている光景は、見慣れないだけにとても不思議な感覚でした。

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下地に最初に塗りつける壁のことを「荒壁」といいます。荒壁には愛知県の土を使い、篩(ふるい)にかけたり、漉(こ)したりした上で混ぜ合わせ、ツノマタ(海藻が原料の糊)やひび割れ防止のためのスサ(藁スサや紙スサ)を加え、水と合わせて1週間以上寝かせます。

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荒壁土を塗った状態です。
藁スサの荒々しい表情から、大地の持つエネルギーを感じます。

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和室も当然ながら土壁です。大きな仏壇を収める1間巾の仏間を設け、その横に変わった床の間をつくりました。床框を省略した踏込床(ふみこみどこ)で、落とし掛け(おとしがけ)のない洞窟のような形状です。
前面の壁にアーチ曲線の開口部を設けた形式を「洞床(ほらどこ)」と呼びますが、洞壁の左右に対称形の袖壁を設けたものは「龕破床(がんわれどこ)」と言って区別されます。いずれの場合も曲線部分の壁は土を塗り回している訳で、土壁だからこそ可能な床の間といえます。

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この家は断熱材と土壁を併用しているため、室内の外周部は柱の見えない大壁にしました。したがって寝室などの部屋にも随所に「塗り回し」という納まりが出てきます。この写真は中塗りが終わった状態ですが、定木を当てて綺麗に角が出ています。見事な職人技ですね。

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仕上げは主に漆喰に土を混ぜた「半田(はんだ)」を塗って仕上げます。洗面所やトイレなどの水回りには、汚れが目立たないということで藁を混ぜた漆喰を塗ります。そしてリビングの一部、スタディコーナーを仕切る壁には、漆喰に紅殻(ベンガラ)を混ぜた赤い壁を出現させる予定です。

土壁だけでも様々な見せ場がありますが、他にも見どころの多い家ですので、完成したらまた報告したいと思います。

岸 未希亜

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