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2024.01.22 / 建築と住まいの話

12年ぶりの善光寺詣り

何度かブログにも書いていますが、神奈川エコハウスの関連法人であるアースデザインオフィスという一級建築士事務所があります。主に当社の施工エリア外で、設計だけの仕事を依頼された場合に活動しています。この14年間で28件(29棟の家)の設計をしたので、平均すると1年に2件も仕事を受けていたことになります。
最新のお仕事は、一昨年の秋に初めて話をいただき、昨年、基本設計と実施設計をした長野・篠ノ井の家です。市街化調整区域の農地ということで、着工までにかなり時間がかかりましたが、漸く上棟することになったので、長野へ行って来ました。

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前日は雪が降って気温も氷点下でしたが、上棟を一日延期したので、この日は穏やかな晴天で気温も5~6度はありました。敷地が広いことに加え、建て主が平屋に近いプランを希望されたので、2階は子供スペースと小さい納戸があるだけで、南側は天井の低い吹抜になっています。その吹抜下に広いリビング・ダイニングがあって、東西には大きな下屋が付くため、建物は羽を広げたような安定感があります。リビング前のテラスには東側の下屋が延びて屋根が掛かり、雨や雪に濡れない軒下空間になります。

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神奈川県で暮らす、神奈川県で家を設計するのとは広さに対する感覚が少し違うので、普段の設計よりも広いLDKになっていますが、階高や天井高さは抑えているので、周囲の家よりも小さく見えます。

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長野では、コロナ禍でも住宅を1棟設計しましたが、上棟や飲み会のイベントはできませんでした。上棟後の打上げは、滝澤工務店の上棟を手伝ってくれる大工さんたちとの久々の飲み会でした(笑)

そして時間に余裕があったので、12年ぶりに善光寺に寄ってみました。
善光寺は長野県長野市にある仏教寺院で、「真言宗」「浄土宗」などの宗派とは無縁の無宗派な点が特徴です。創建644年と伝えられる善光寺は、日本において仏教が諸宗派に分かれる以前からの寺院であるため、宗派の別なくお詣りできるそうです。欲張りで不信心なお婆さんが、川でさらしていた布を牛の角に引っ掛けられて、小諸から長野の善光寺までやって来たという「牛に引かれて善光寺詣り」の伝説は有名ですね。

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長野駅北口を出て正面の道を進み、最初の大きな交差点を右に曲がると、真っ直ぐに善行寺へと向かう「善光寺表参道」です。徒歩だと駅から約30分、バスに乗れば約10分の「善光寺大門」で下車します。

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善光寺交差点から先の道脇には宿坊が並び、正面に登録有形文化財の仁王門が現われます。

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そして仁王門を潜ると、両側に飲食店や土産物店が並ぶ仲見世通りが続き、門前の雰囲気が濃厚です。山門の手前には「ぬれ仏」と呼ばれる延命地蔵尊と、六地蔵が鎮座していました。

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正面の立派な山門は1750年の建立で、国の重要文化財に指定されています。
そして山門を潜ると本堂が現われます。現在の本堂は1707年に建立されたもので、国宝に指定されています。

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近世建築としては東大寺大仏殿に次ぐ規模の建物で、屋根の広さは日本一だそうです。正面から見た本堂は妻入りの入母屋造りに見え、東大寺大仏殿よりも小ぶりで「屋根の広さ日本一」に疑問符が付くと思います。しかし上から見ると、入母屋屋根がT字型になった撞木造りになっていて、間口7間(24メートル)に対して奥行きが16間(54メートル)もあるのです。側面から見るとその巨大さがよく分かります。

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善光寺のすぐ東側には長野県立美術館が建っています。本館ではアニメ界の巨匠・庵野秀明展が開催されていて、隣接する東山魁夷館には東山魁夷の日本画が常設展示されていますが、残念ながら水曜休館ということで閉まっていました。

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しかし建物が綺麗だったので、近寄ってウロウロ歩いてみたら、本館は2021年に建築されたばかりの新しい建物であることが分かりました。かつてここに建っていたのは、1966年に竣工した「信濃美術館」で、設計は毎日新聞社本社ビルなどを設計した林昌二氏(日建設計)だったそうです。
新しい県立美術館の設計者である宮崎浩氏は、この恵まれたロケーションの中で建物が風景の一部となるよう「ランドスケープ・ミュージアム」を構想。東山魁夷館と接続していた旧館の跡地は空間として残し、水景のある共通エントランス広場にして、より一体的な施設に昇華させています。

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隣接する東山魁夷館は1990年に建設された建物で、設計は建築家・谷口吉生氏でした。先日書いた「山形紀行」のブログで紹介した「土門拳記念館」の時と同様に、父・谷口吉郎(建築家)と東山魁夷画伯が親しかった縁で、美術館の設計を担当したそうです。

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側面から善光寺を眺められる立地を生かして、建築家は魅力的な屋上テラスを造っていました。東側は道路に近いレベルなので、閉館中でも外からこの写真を撮ることができます。テラスの雪が踏み荒らされていなかったのは閉館中だったお陰なので、逆に幸運だったのかも(笑)
でも、東山魁夷の絵と2つの美術館を見るために、ぜひ再訪しようと思いました。

岸 未希亜

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