昨年の秋にお話をいただいてから一年弱、サン住宅(静岡県磐田市)のモデルハウスが遂に完成しました。
グランドオープンに先立ち、関係者向けのプレオープンがあったので行って来ました。
建物は、白い外壁が青空によく映えます。板壁や格子の木質感が、木の家であることを強く感じさせます。
雁行する建物と屋根のかたち、車庫やポーチの陰影が、建物に深みを与えています。
室内に足を踏み入れると、モミ、スギ、ヒノキなどのムク材に囲まれ、木の香りにあふれています。
珪藻土の白い壁が部屋を明るくし、清々しい空気が流れています。
変化する自然光の移ろいや選りすぐりの照明が、空間を心地よく照らします。
依頼者である「サン住宅」からの要望はシンプルなものでした。
従来の家づくりで柱としていた「木を大切に扱うこと」に加えて、従来とは一線を画する「和モダン」の洗練されたデザインを取り入れることが一つ。
そして、薪ストーブを中心としたリビング・ダイニングの居住性も大切な要素でした。
室内の空間デザイン以上に難しいのが外観デザインです。
与えられた敷地は、脇に歩道と緑道のある広い通りに面していて、反対側にも道路、南側には遊歩道があるたいへん恵まれた環境のため、3方向からよく見えることを念頭に「どこから見ても姿の美しい建物にすること」を自らに課しました。
階高を低く抑え、緩勾配の切妻屋根、軒先を薄く、彫を深く、板張りの外壁、木製の竪格子といった要素は、以前『建築知識ビルダーズ』に書いた「和モダン」のテクニックに通ずるものです。
設計している時から分かっていたことですが(笑)、とても見栄えのする建物になりました。
プランニングにあたっては、暮らす人の身になって生活のイメージを膨らませました。
実際に住む人がいないモデルハウスでは設計者がそれを肩代わりしますが、ふつうの住宅であれば、住まい手本人が考えなければなりません。
具体的には、生活のシーンを思い浮かべ、自分に問いかけていく作業です。
それは部屋の数や広さを追い求めたり、設備や機能の充実を図るよりも大切なことです。
例えば、玄関から家に帰って来た時の家族の動きはどうか。
お客様に何を見てもらい、どう迎え入れたいのか。
室内に足を踏み入れた時に何が見えるのか、
どんな景色を見たいのか。どんな会話が交わされるか。
ダイニングは食事だけの空間なのか。
それとも子供たちが勉強する場所でもあるのか。
リビングとダイニングの機能は分ける必要があるのか、一つでいいのか。
お友達や来客が多いか・・・・・など
それらのシーンを重ね合わせ、
予算から導かれるボリューム(延べ面積)の中に落とし込むのが間取りです。
生活のシーンが生き生きと描かれている間取りは、
希望の部屋を寄せ集めた「部屋取り」とは違います。
室内に身を置いた時に心地よく感じられる空間があったり、
室内を移動する際のわくわく感があったり、
生活に則した動線計画があったりして、
住めば住むほどその違いを実感できると思います。
今回のモデルハウスでも、
来場される方々に生活のシーンをイメージしてもらえる間取りと空間を提案しました。
静岡県の方々はもちろん、神奈川県で住宅をお考えの多くの方にも見ていただき、
空間体験をしていただきたいモデルハウスです。
岸 未希亜